北米でマルチリンガルの子育て、仕事、海外生活と日々奮闘中の筆者が感じた日本と海外の違いや気づきを綴るコラム。

第11回目は、「出る杭は人気者」です。
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突然だが、うちの子は園でなかなかの人気者である。 こんなことを言うと「はいはい、親ばかねぇ~」という声が聞こえてきそうだが、まぁほとんどの親は「うちの子サイコー!」という思いがベースにあるのだから、大目に見てほしい。


我が子は日本とカナダのハーフ(ミックス)であり、見た目も見事に半々だ。

 
だから子どもが保育園に通うとなったときには、この白人社会(カナダは多国籍民族の国だが、息子の園は9割型白人で当初アジア人はおそらく私一人だった)で息子は大丈夫なのだろうか、見た目の違いやみんなが分からない言葉を話すことで理解してもらえずに、寂しい 思いや疎外感を感じてしまったらどうしようと少し不安だった。


入園後は、慎重派でマイペースに行動したい息子の性格もあってか、クラスの子ともつかず離れずで楽しく過ごしていたようだが、たまに「先生や友達は僕のこときらいなんだ」とつぶやくことがあった。


よくよく聞いてみると、日本語で話した時にだれも返事をしてくれなかったことでそう思っていることが判明したりした。

 
どのように説明したら息子は理解できるのだろうかと思案したが、「ここでは日本語はママ にしかわからない特別な言葉だということ」「みんなはあなたのことがきらいなんじゃなくて、日本語を聞いたことがないからわからないこと」「園で話すときには、パパやカナダの 家族と話をするときの言葉で話すとみんなが返事をしてくれること」をコンスタントに伝えることにした。


そうやって日々を過ごすにつれ、息子も人によって言語の使い分けができるようになり、私と息子が日本語を話していると、クラスのみんなが注目して耳を澄ますようになっていっ た。何人かの子には「二人は何語でしゃべってるの?」と聞かれ、その後は私達の日本語を耳にすると、「日本語をしゃべってるんだよ」と得意げに自分の親に報告したりしている。

 
私は幼い頃から周りの人に「変わってるね」とよく言われていた。そのため、その後どんなに突飛な展開の決断や人生を選んでも、周囲の人は妙に納得顔で「あなたらしいね」と言ったものだ。
そんな質だからか、気に入ってくれる人はとことん好きになってくれるけども、 苦手だと思った人からは人生の様々なステージでいじめにあった。


そういう人生を歩んできたから「出る杭は打たれる」というイメージを私は頑なに持ってい た。人と違うことをしたり、言ったり、見た目が変わっていたり。とにかく周りに馴染まな いものは排除されるのだと。


でも、息子はいま園で先生からも子どもたちからも人気の子になっている。周りと違う見た 目も、なんだかわからない言葉を流暢に?話すその感じも、人とはあんまりつるみたくない 傍観者のような態度も彼らにとってはクールに映るらしいのだ。


人と違うことはマイナスなことではない。ややもすればスペシャルになる可能性を秘めている、ということを息子の存在が教えてくれた。そんなことは知っていたはずなのに、日々を過ごすうちに上書きされて、忘れ去ってしまっていたもの。子育てをしているとそういう大切な何かを思い出させてくれる場面に出会したりする。

 
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SASAKI

 

海外移住をきっかけに本格的にライター・エディターとなる。英仏話者。人々の生き方や働き方、子育てに興味があり、取材・インタビュー記事が得意。現地では新たな挑戦として、現地企業でマーケティング・カウンセラーも経験し、海外と日本の架け橋となるようなサポートもしてみたいと考えている。