イギリス発、十人十色の働き方
ボッティング大田 朋子(Tomoko Botting-Ota)
本コラムでは、働く女性にインタビューして仕事・起業のこと、ライフワークバランスのとりかた、リラックス法、時短の工夫といったお話をうかがいます。
第3回目は、約20年前にスペインへ移住し、現在バレンシアに在住、和食を軸に独自のメニューをレストランやプライベートパーティーで提供されているシェフの小山 奈穂子さんに登場していただきます。
現在されているお仕事のことを教えて下さい。
イベント会場などで料理を作る仕事をしています。イベントへのケータリングやプライベートパーティーでのシェフ、料理教室開催、レストランのメニュー開発などを手掛けています。
独立してシェフとして多様な分野で活躍されている現在までの経緯を知りたいです。
日本にいたときもホテルのレストランやイタリアンレストランで働いていたんです。だから結婚してスペインに住み始めてからもすぐにレストランで働き始めました。しばらくは寿司シェフとして色々なレストランで働き、経験を積みました。
出産を機に、ワークスタイルを変えたいというか、今後の働き方を考え始めたんです。そんなとき知人が誘ってくれたことがきっかけでイベント会場に寿司のケータリングをするお仕事をしたのですが、それはその後自分が望むワークライフバランスを築いていくヒントになりました。
子供が3歳のときに単発的ではない仕事に本格復帰。「スパニッシュ・フュージョンをウリにしたレストランを始めるから手伝ってほしい」とのオファーをいただいたんです。その頃はバレンシアに和食ブームが来始めたころで、先駆けでした。その後から次々とバレンシアに和食レストランや、和食とスペイン料理のフュージョン料理を出すモダン・スパニッシュタイプのレストランができたのですが、それらのレストラン立ち上げのお手伝いをする機会に恵まれました。
そうこうしているうちに、知り合いが経営するイベント会社やレストラン、カフェなどで「次のイベントでNAHOKOに料理を作ってほしい」「ケータリングしてほしい」「メニュー開発を手伝ってほしい」などと声をかけていただくようになって、イベントに出す料理を作ったり料理教室を開いたり、メニュー開発のコラボをしたり、プライベートパーティーにシェフとしてたくさん呼んでいただくようになって、今にいたります。
去年まではバレンシアのオペラハウスにもお寿司をケータリングしていました。
いただいた機会を大切に美味しい料理を楽しんでほしいと工夫してやっているうちに人気になって、気がついたら料理を自分のペースで提供することが本業になっていました。
料理ができるからレストランで働くというだけでなく、レストラン立上げのメニュー開発から料理教室開催まで幅広くご活躍されているんですね。
料理教室は依頼をいただいことがきっかけで2010年頃から始めたんですが、1年目は100人ぐらいに教えましたよ。今は年間に数回くらい開催しています。会社のアクティビティとして依頼されることが多いです。
ちなみに、日本食は世界的にブームですがスペインではどのようなメニューが人気なのですか?
スペインではフュージョンのお寿司が人気です。マンゴーやイチゴなどの果物を使った「フルーツ寿司」もポピュラーです。マンゴー、イチゴ、ミント、クリームチーズなどを使います。日本の方には驚かれるんですが、マンゴーとサーモンの組み合わせは絶品ですよ!
天むすのようにお寿司の中に天ぷらを入れたものや、海苔巻きの天ぷら、枝豆、餃子などはスペインでも人気があります。刺し身、手巻き、太巻き、ニギリなどスペイン人なんでもいけますよ!私がプライベートシェフをするときに作っているメニューではうなぎも出します。うなぎとフォアグラ、アボカドを組み合わせますが、とても喜ばれます。
わさびが好きな外国人って多いですが、スペイン人も例外ではなくワサビやポン酢が好きな人が多いです。それにバレンシアの地中海岸に位置する土地柄、醤油とオリーブオイルの組み合わせも人気です。
話が前後してしまうのですが、どうしてスペインに住むことになったのですか?
学生時代から海外留学に憧れていたんです。高校のときもアメリカから留学生が来たりして刺激を受けていました。短大は家政科だったため留学とか外国語とはすっかり離れていたんですが、海外旅行が好きで、20代は語学留学中の友人を訪ねてニューヨークやロンドンに遊びに行きました。
それでも自分が留学することは現実的ではなかったんですが、たまたま、日本で開催されていたメキシカンフェスなどでたくさんの友達ができて…。その多くは中南米の子たちですごく気があったので、中南米の友達とコミュニケーションをとりたいとスペイン語を勉強し始めたんです。そしてスペイン語圏に留学することを決めました。留学先にはエクアドルかスペインか迷ったのですが、スペイン人の友達が数人いたのでスペインに留学することを決めました。
留学がきっかけとなってスペインに住み始め、長い話を省略すると、今の旦那と出会って仕事を始めて家族を築いて…、と今にいたります。
お子さんは今小学生なんですよね。育児との両立で大変なことは何ですか?
仕事で疲れていても、子供の学校の送り迎えをしないといけないことが大変です。海外で子育てをしているとしょうがないことなのですが、学校でも習い事でも子どもの送り迎えが必要で、時間もかなり取られるし体力的にも思っていた以上にキツイです。
それと、スペインの小学校はテストや宿題が多いので、テスト勉強や宿題を手伝ってあげないといけないことも大変です。
仕事と家との両立のための工夫は?職業柄、ご家庭の料理でどのような工夫をされているのかも興味あります!
買い出しは、「まとめ買い」が鉄則です。足しげくスーパーに通う時間がないからです。 買い出しから帰ったら、食材を小分けしたり人参の皮を剥いておいたり、野菜をカットしたりと、すぐに使える状態にすることを心がけています。 まとめて買い出しをするとか下処理をしておくことはその時は時間をとりますが、その後の時短にかなり役立っていると思います。
それに時間に余裕があるときに、その日の料理と並行して野菜を茹でたり肉を調理しておきます。こういうストックを作っておくと、多用な日にすごく助かりますよね。ごはんは多めに炊いて、冷凍庫にごはんは常にストックしています。
家庭料理でいうと、自分や家族のためにバランスの良い献立を心がけていますが、時間がなくて自炊ができないときには冷凍ピザやお惣菜にも頼りますし、しんどいときは手間のかからない献立にしますよ。忙しいときにはお惣菜に頼るけど、サラダだけは手作りしたり、といった感じですね。外食を利用できるならするのもいいと思います。
ワークライフバランスをとるために意識されていることがあれば教えて下さい。
毎日の料理でもそうですが、無理をしないようにしています。 無理して自分が倒れたら、結局は家族にも迷惑がかかる、と肝に銘じたくさんやることがあるときでも完璧にこなさず、できることを少しずつこなします。
それに、切り替えを大事にしています。たくさん働いたあとは手抜きしたり休息をとるようにしています。その繰り返しです!
斬新なメニューのアイデアはどこからきていますか?今後の抱負は?
SNSやネットで流行っているものを常にチェックしています。行きたいお店やレストランもチェックしていて、休日には食べ歩きをしたり新商品を探しにいろんなスーパーや市場に足を運ぶようにしています。
これからは、発酵食品のことをさらに勉強したり、お酒と料理のマリアージュについてもっと知識を深めたいです。色んな国の料理を食べて作れるようにもなりたいです。あと、パーティー料理のレベルを上げることが今の目標です。
本日は貴重なお話をありがとうございました!
小山さん家の食卓は品数がたくさんでレパートリーが豊富で、お母さんの料理をこんな風に毎日楽しめる家族は幸せだなあとつくづく思います。作り置きの充実を目指すわたしには、小山さんの日常テクニックは参考になることばかりでした。同時に「忙しいときこそ無理はしない」という小山さんの言葉はとても説得力がありました!
小山さんのメニューをのぞきたい方や、スペイン(バレンシア)界隈で小山さんのお料理を堪能したい方はこちらまで!
【Cocina de
Nahoko】
https://www.facebook.com/Cocina-de-Nahoko-208384259755499/
ボッティング大田 朋子 Tomoko Botting-Ota
ライター&プロジェクトプロデューサー
アメリカ→ドイツ→インド→メキシコ→アルゼンチン→(数か月ばかりの英国滞在)を経て、2011年秋スペインへ移住。
現在イギリス・カンタベリー在住。
メキシコでオーガニック商品の輸出会社立ち上げ+運営。
アルゼンチンのブエノスアイレスでマンガの国際著作権エージェント立ち上げスペイン語出版。
⇒プロフィールはこちら https://tomokoota.wordpress.com/about/
ブログ https://tomokoota.wordpress.com/