12月のイギリス 「ワクチン開始、クリスマスは一時的に規制緩和」

                                                                                                                                            ボッティング大田 朋子

 

イングランドでは1ケ月続いた2度目のロックダウンが終了し、12月2日からは再び地域別のコロナ対策が行われている。筆者が住む地域は3段階に分けられた警戒システムのうち、新型コロナウイルス対策で最も厳格な警戒レベルである「ティア3」に属しているので今も室内での社交は禁止されているし(公園などの屋外の公共施設であれば6人まで会える)、レストランやパブもお持ち帰りとデリバリー以外のサービスは行われていない。という訳でロックダウンが終わったとはいえ生活自体はロックダウン中とそれほど変わりなく、気がつけば年の瀬を迎えている。

 

・ワクチン接種がスタート

とはいえ今月はコロナが始まって以来初めて明るいニュースに包まれた。というのも世界のなかでも先陣を切って、イギリスで新型コロナウイルスのワクチン接種が始まったのだ。不安と我慢とたたかってきた長いトンネルの向こう側にやっと光が見えたような気持ちになったのはわたしだけじゃなかっただろう。医療関係者や介護従事者、そして80歳以上の高齢者を優先して接種がすでに開始されている。

 

筆者の友達のなかでも、医者をしている友達や老人ホームを経営している友達たちはすでにワクチンを接種し、3週間後に2滴目を打つと言っていた。「ワクチンのおかげで自分も守られるし感染リスクの高い人たちを守れる可能性が高まる」と言っているのを聞いたとき、最前線でこの状況に立ち向かっている人やその家族が3月以来ずっと抱えていたリスクや不安の大きさを改めて感じた。

 

個人的には、承認されてすぐのワクチンを接種することに不安も覚えるが、どちらにしてもワクチン接種優先順位が低いわたしにはぜいたくで無駄な心配といえる。それよりもワクチン接種が開始されたことで社会全体の状況が改善し、日常の生活に戻れる日が近づいていることが嬉しい。

 

・ワクチン接種、優先順位に疑問も

わたしの義父は80歳を超えているのでワクチンが接種できるが、連絡がきても接種を辞退するだろうと言っていた。イギリスに住む成人みんなが受けられるだけの数を確保しているとイギリス政府は断言しているが、ワクチンの大半の接種は来年以降になり、現在は接種数が限られている状況で、「自分よりももっと将来がある若い人に機会が与えられるべきだ、自分たちのような人生をすでに生きた高齢者ではなく、学校の先生やロックダウン中でも配達をし続けてくれた郵便配達の人やスーパーで働いている人たちにこそその分を回すべきだ」と力説していた。ちょうどワクチン接種第一号としてもうすぐ91歳になる女性のことがニュースに出ていたのでそれを受けての所感もあっただろう。「高齢者は重症化するリスクが大きいから」とも思うが義父と同じようなことを言っている人が周りには少なくない。高齢者のワクチン接種を優先することが必ずしも該当者の思いを優先しているとは限らないのかもと考えさせられた。

 

ワクチンの優先順位は、イギリスでは介護や医療従事者、80歳以上の高齢者が最優先で、今後は75歳以上、70歳以上、65歳以上と年齢を重視して優先順位がつけられている。ちなみにワクチン接種は義務化されていない。

 

・ロックダウンでできた絆

日本で正月に年賀状を送り合うように、イギリスではクリスマスに向けて12月にクリスマスカードを送り合う。今年は例年以上にクリスマスカードを書く人が多かったそうだ。

 

わが家でも仲の良い友達やお世話になっている人など例年のメンバーに加えて、今年はご近所の人たちからもたくさんクリスマスカードをいただいた。3月からのロックダウンのときに「必要なものはない?」「困っていることがあったら連絡してくださいね」と声をかけ逢った近所の人たちだ。近くに住んでいながらすれ違ったときに挨拶をする程度の関係だったのが、ロックダウンを通して何かあれば頼りにしあえる関係が築けたことを嬉しく感じていたが、郵便受けに入っていた隣人からのカードを見て微笑みがこぼれた。大変だった2020年に唯一よかったことの一つが、近くにある人と会話をし、小さな幸せを味わう時間がとれたことだと思う。

 

・クリスマスシーズンは特別措置適用

ワクチン接種が始まった明るいニュースとは対照的に、一部の地域では感染者が急増しており、しかも新型コロナウイルスの変異種が出現したとの発表もあり、まだまだ予断は許されないが、イギリスでは12月23日から27日のクリスマスを挟んだ5日間は、対コロナ規制が一時的に緩和されることが決まっている。現在は同世帯以外の人と室内で会うことすらできないティア3の地域であっても、3世帯までなら集まることが許されている。

 

クリスマスは多くのイギリス人にとって特別なのでクリスマス期間の特別措置はしょうがないのだろうが、少し複雑な気分なのが正直なところかもしれない。

どうか1月に再びロックダウンになりませんように……!

 

 

さて、今年はコロナに明けコロナに暮れる大変な一年でしたがみなさんが安全で健康で年末年始を過ごせますようにと心から祈っていります。

今年もイギリス発コラムを愛読くださり本当にありがとうございました。

 

どうぞ良いお年をお過ごしください。

 

感謝を込めて、

来年もどうぞよろしくお願いいたします。

 

ボッティング大田 朋子


ボッティング大田 朋子 Tomoko Botting-Ota

ライター&プロジェクトプロデューサー

 

アメリカ→ドイツ→インド→メキシコ→アルゼンチン→(数か月ばかりの英国滞在)を経て、2011年秋スペインへ移住。

現在イギリス・カンタベリー在住。

 

メキシコでオーガニック商品の輸出会社立ち上げ+運営。

アルゼンチンのブエノスアイレスでマンガの国際著作権エージェント立ち上げスペイン語出版。

 

 ⇒プロフィールはこちら https://tomokoota.wordpress.com/about/

 

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