北米でマルチリンガルの子育て、仕事、海外生活と日々奮闘中の筆者が感じた日本と海外の違いや気づきを綴るコラム。

第27回は「当たり前についての葛藤」の話です。

=========================================

秋は新学期の季節。

カナダ・モントリオールでは、今年の3月から夏休みが終わる8月末まで、およそ半年もの間、園や学校が休みになっていた。わが子も同様で、9月に入ってやっと園への生活に戻った。

 

友達の中には、親と過ごすステイホームな時間が退屈すぎて「早く園で友達と遊びたい!」という子もいたが、わが子に限ってはパパ、ママと一緒に遊べて嬉しい〜派だったので、この度の園復帰はかなり辛い時間になってしまった。

 

日本であれば、幼稚園はまだまだ義務教育過程でもないので、「行ってもいかなくても……」という風潮があるかと思うが(わたしはそう思っていた)、カナダではフルタイムでの共働き親が多いため、子どもに合わせて仕事をセーブしたり、たまに園を休ませるといった選択肢がほとんどない。親の仕事に合わせて、子は園に行くのだ。

 

そのことが”当たり前の常識”としてあるので、子が「行きたくない」と言ったところで、親はその行動は曲げない。

 

正直なところ、私は時間の融通が利く仕事をしているので、もし子どもが本気で嫌がったら、たまに休む、または時短にする、という選択肢があっても良いのではないかと思っていた。しかし、夫と夫の家族はそれを良しとしたがらず、意見が分かれてしまった。

 

これまで文化は違えど、そこまで「うーん納得いかないな」と思うことはなかったのだが、今回はじめて一人腑に落ちずにいる。はたして、そんなに嫌な思いをさせてまで園に通わせる意味はあるのだろうかと。

 

カナダでは年中〜年長にかけて、少しずつ小学校生活への準備期間に入る。そのため、その時期から園はより小学校に近いプログラムになっていくので、親は簡単に休ませたがらないという背景もある。とはいえ……。

 

日本の両親にこの件を話したところ「半年も園に行かなかったのだから、その反応は想定内。徐々に慣れさせたら?」という、わりと私に近い意見だった。

 

郷に入っては郷に従え。これは海外生活でいつも思っていたことだが、わたしはどうしたら良いのだろう?(今回の子の嫌がりぐあいは、かなり酷い)そして、そもそもそこまでして、なぜ園や学校にいかなければならないのだろう?とやや飛躍して考え始めた。

 

自分が園や学校が好きだったか?と問われれば、そこまで好きだった記憶がない。そして、双方の家族にも同じ質問をしてみたが、義務教育段階において、学校や勉強はそこまで好きじゃなかったと言っていた。(大学に関しては好きなことを学べるのでまた別物とも)

 

それよりも体育や美術、友達との時間が楽しくて学校に行っていた、学校は行くのが当たり前だと思っていたから、とりあえず行っていたという返事。とはいえ、彼らはのちに教師になったり、技術者として医療に従事したり、起業したりと、人生においてなかなか立派な道を歩んでいる。つまり、将来において学校や勉強の好き嫌いはそこまで関係しないんじゃないのかな?と思ったりもした。

 

言葉を覚える、字を読み書きできる、友だちができる、社交性、人との関係性構築、規律を知るといったことは、もちろん園や学校で学べる。でも、それは毎日学校に行けなくても、可能じゃないかなとも思う。そして極端な話、学校という場所じゃなくてもそれらは学べるのでは?とも思う。

 

園や学校に行きたいなら、それはベター。でも、皆勤賞になるほどに頑張らなければならないものなのだろうか?

 

いち親としては、最低限の教育は身につけて欲しいと思うし、できれば大学へ行って興味のある分野を突き詰めて欲しいと願う。でも”当たり前だから” ”みんながそうしているから”ということを理由にするのではなく、なぜなのか?何のためなのか?をしっかりと腹落ちした状況で子どもには人生を歩んでほしいな、そのサポートをしたいなと思うのである。

 

=========================================

SASAKI

 

海外移住をきっかけに本格的にライター・編集者となる。英仏話者。人々の生き方や働き方、子育てや教育に興味があり、取材・インタビュー記事が得意。現地では新たな挑戦として、現地企業でマーケティング・カウンセラーも経験し、いつか海外と日本の架け橋となるようなサポートもしてみたいと考えている。