北米でマルチリンガルの子育て、仕事、海外生活と日々奮闘中の筆者が感じた日本と海外の違いや気づきを綴るコラム。

第14回目は、「子ども優先の日本vs大人優先のカナダ」です。

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海外で生活をしていると、日本人の考えとは異なるなぁ…どうしよう?という場面に出会うことはよくある。こと子育てに関しては特にそうだ。北米と日本では文化背景も違うし、異なった価値観や意見、やり方があるのは当然のこと。親であれば、子どもにとってベストだと思う子育てをするのが一番とは思うが、その一本道だけで大丈夫なのだろうかと最近は迷いがでてきている。

 

私は日本で夫は北米。そして子どもは、そのミックスで将来の生活ベースはたぶんカナダ。

こういう状況の場合、どの価値観をもって子どもに接したら良いのかわからなくなるときがある。夫婦間だけの違いであれば「家族ルール」を作ればよいが、家族外の人々や学校といった教育施設が絡んでくると、誰ルールに沿ったら子どもにとってはベターなのだろうか。

 

こんなことがあった。

 

去年、私は半年ちょっと正社員で現地の企業に勤めていた。これまで子どもを預けるのは1日4~6時間くらいだったが、フルタイムの仕事が始まると、最低8時間は預けることになる。私はこれをものすごく気にしていた。子どもが可哀想ではないか、まだ親との時間が大切な時期ではないかと。

 

今日では、日本でも共働きの親は当たり前になりつつあるし、北米ではそれがデフォルト。

しかし私の根っこには、子ども優先で子育てをしてくれた母の姿があり、仕事はしつつも、子どもと過ごす時間は園に預けるそれよりも長くしたいと思っていた。だから、現地の仕事を試したいという私の願望だけのために、子どもを長時間預けることに抵抗があったのだ。

悩みに悩んで、まずは試しに挑戦して、もし困難になったらまた元の生活に戻ろうと決めた。

 

しかし、園の先生に今後の送迎時間について話をしたとき、勢い余って「預ける時間、長いかなと思っているんですけど…まだ少し迷ってて」と相談してしまった。

 

すると、「気にすることないですよ。親が働くのはあたりまえ。いくら小さいといっても3歳になれば親の言ってることは理解できるから、ご飯を食べたり洋服を買ったり、生活にはお金がかかる。そのために仕事をするんだと話せばいいんです」と言われた。「親が気にしてしまうと、子どもはそれを察知して気難しくなります。子どもは親の保護下にあるんだか

ら、親の都合にあわせるのが普通」とも。

 

それを聞いて、この国は大人が主体なんだなと感じた。そういえば、初出張のときも同じ様なことをいわれたし、仕事でなくとも「子どもを預けて夫婦で出かけたりしたらどう?あなたの人生も大切に」と言われたこともあった。

 

それから子どもへの言い聞かせについてもそうだ。日本では、子どもの主張もできるだけ受け入れて、それが駄目なときはその理由をしっかりと説明する、というやり方が理想とされているような気がする(私はそう)。でも、それを毎回していると海外では「我慢強いママね」と言われる。こちらは、親が駄目と決めたことに明確な理由はなくてもよい「駄目」で終わりだ。

 

また、子どもの思いや言葉を汲み取ったり、先回りして世話を焼くのは日本人ママのほうが多い気がする。こちらのママは、例えば着替え一つにとっても、本人が終わるまで一切手を出さないし、ただ見ている。

 

子どもができたら大人の世界が変わるのではなく、大人の世界に子どもがやってきたのだから子どもは親に従う。というのが海外の考え方だ。

 

こういった違いを経験すると「私の日本流のやり方は果たして良いのだろうか」「我が子の生活ベースが将来海外になるならば、欧米流のやり方に沿ったほうが、子にとっては生きやすくなるのではないだろうか」と悶々と考えてしまう。

願わくば、日本と海外のいいとこ取りをしたいと理想を描いていたが、現実はなかなかに難しい。

 

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SASAKI

 

海外移住をきっかけに本格的にライター・エディターとなる。英仏話者。人々の生き方や働き方、子育てに興味があり、取材・インタビュー記事が得意。現地では新たな挑戦として、現地企業でマーケティング・カウンセラーも経験し、海外と日本の架け橋となるようなサポートもしてみたいと考えている。