北米でマルチリンガルの子育て、仕事、海外生活と日々奮闘中の筆者が感じた日本と海外の違いや気づきを綴るコラム。

第13回目は、「海外移住をするということ」です。

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大人になってからの海外移住。私が移住をしたのは30歳をすぎてから。

それまでは一人旅などで海外を15ヵ国以上(延べ数だったらその倍はある)、フランス留学とカナダワーキングホリデーを経験していて「あの国にまた行きたい!」と強く思うことはあっても、日本が恋しくなったことはほとんどなかったあの頃。

 

それにも関わらず、移住したばかりの1年目は気分が落ち込んでとても辛かった。

正気に戻った2年目、あれはホームシックと冬季うつを患っていたんだなと気がついた。カナダの気候は少なくとも、年に5か月間は寒く、日照時間が短い。この環境の変化で、気持ちが落ち込んだり、体調不良になったりする人も多いという。私も知らないうちにその影響を受けていたようで、それからは冬時期のビタミンD摂取は欠かせない。

 

あれから7年。年を追うごとに日本や家族が恋しくなっている。

 

海外移住でもっとも骨が折れるのは、新たな土地での新たな制度(老後・子供教育・国の制度や福祉関連)を一から外国語で学び・知識を集めること。外国語環境でいろいろするというのは、やはり母国語とは違ってなかなかに大変だ。ボキャブラリーだって、どんどん追加していかないと足りないなと年々感じる。

 

そしてもう一つは、人生に欠かせない、友人の存在。大人になってからの気のおけない友人作りは、とても難しいと感じる。なんとなく楽しい時間だけを過ごす、さらっとした友人はいても、幼馴染や昔なじみの「なんか通じる信頼感」のような関係性を築ける人に出会えるというのは、キセキに近いんじゃないかという現実。

 

友人は日本人に限らなくてもいいのだろうけど、日本での幼かったときの思い出話や面白かったテレビや世の中に起こった出来事なんかは、やっぱり日本人同士でないと「わかるー!」という盛り上がりができないから、夫が外国人である以上、日本人の友達はやっぱり不可欠だと感じる。

 

この間、海外移住してから出会った友人Aと久しぶりにお酒を愉しんだ。彼女とは路上でなんとなく言葉をかわすようになって知り合ったのだが、いまでは気のおけない友人の一人だ。

 

そんな彼女と話をしていて、ふと質問された。

「自分が自然体でいられる、なんでも話せる友達ってこっちに何人くらいいる?」「私はけっこう少ない。。7人くらい」と彼女。

 

私も真剣に考えてみた。「うーん。。。4、にん??」

 

答えてから、その人数に驚いた。少なすぎやしないか!?彼女は私の倍の年数カナダに住んでいるから、私よりも出会いが多かったのかもしれないが。それでも、なんというか自分のキャパの狭さを感じた。

 

私は決して友人に対してピッキー(死語?)なわけではない。仲良くなれそうだなぁと思った友人は、これまで10人以上はいたはずだ。でもなぜか、私がそう思った友人は、日本人もカナダ人も他の土地に引っ越していってしまう…。

 

日本の友人・知人には、海外に住むことや国際結婚はけっこうな確率で「なんかいいねー!」と言われる。

 

でも実際にしてみると、歳を重ねるごとに自国への愛着が募り、母国語である日本語で楽にいろいろなことをこなせて、情報を知れて、昔ながらの知り合いや馴染みの場所がある、日本での生活が恋しくなってしまうのだ。

 

海外移住者の中には、きっとこういう気持ちにならない人もいるとは思う。でも、将来子どもが巣立ち、もし夫が先立ってしまって一人になったら。年老いた私はやっぱり日本に帰りたくなってしまうのだろうか。それとも、こっちでできた数少ない友人たちとバカ笑いをしながら、カナダライフを楽しんでいるのだろうか…

 

などと、5か月間にも及ぶ、なが〜い冬の体感温度マイナス30度になるこの土地で、自分の老後に思いを馳せる、ちょっぴり憂鬱なこの頃なのである。

 

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SASAKI

 

海外移住をきっかけに本格的にライター・エディターとなる。英仏話者。人々の生き方や働き方、子育てに興味があり、取材・インタビュー記事が得意。現地では新たな挑戦として、現地企業でマーケティング・カウンセラーも経験し、海外と日本の架け橋となるようなサポートもしてみたいと考えている。