北米でマルチリンガルの子育て、仕事、海外生活と日々奮闘中の筆者が感じた日本と海外の違いや気づきを綴るコラム。

第10回目は、「病院へは極力行かない〜海外の医療事情」です。 

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最近はカナダもぐっと寒くなり、最高気温はほぼ毎日一桁。先月までと比べると10度以上 は下がっており、この急激な冷え込みはかなり身体に堪える。大人でさえもそうなのだから、子どもであればなおさらだ。 

 

先週は我が子も咳と鼻水から始まり、しまいには夜中に耳が痛いと泣き出して中耳炎を疑う ようなできごとがあった。

波はあれど10日ほど眠れない日々が続き、つらそうにしていた。そしてもちろんのこと、夜中に看病する私もぐったり。

 

こうなると睡眠不足から免疫力 が下がり、子どもから病気をもらってしまう。

子どもがいる家庭であればよくある光景「病 のネバーエンディングストーリー」の幕開けである。 

 

子どもが病気になる→母親に移る→子どもが治りかけ→父親に移る→子どもが再発する→母親が治りかけ…という恐ろしい病ループにはまり、ひどい時は1ヶ月以上続く。この状態は 本当にしんどい。 

 

このループをなんとか回避したく「病気にはなりません!」と誰にともなく一人宣言をし、気合のバリアで日々を乗り切るという、スピリチュアルな方法をもって挑んだことも何度か ある。夫には毎回苦笑いされるが、意外に効果はあるのだ。しかし当たり前だが、この精神 論は子どもには通用しない。 

 

日本であれば、風邪を引いた、熱や鼻水、咳が止まらない、痰が絡んで呼吸が苦しそうだといえば、すぐに小児科の先生に診てもらうことができる。中耳炎に関しては、症状がでたら 翌日には必ず病院へ行くこと。とも言われている。私もぜひそうしたいのだが、海外ではそ れができない。 

 

そう、カナダではこれらの症状やインフルエンザなどで人々は病院に行かないのだ。そしてそれは子どもでも同じである。

このシステムを知った当初はかなり驚いた。 

 

自分事であればまだ我慢はできるが、子どもに関しては何かあってからでは遅いのにと思う のが親ごころ。

だから、子どもが赤ちゃんの頃は無理をしても病院へ通った。しかし、小児 科の先生は診察はしても、薬は基本処方してくれない。その病状がウイルス性なのか細菌性 なのかをチェックし、ウイルス性の場合は「休息と栄養で自宅待機」細菌性の場合は「抗生 物質を投与して終わり」である。

解熱剤も38度を越えなければ与えなくて良いというし、 咳止めや鼻水止めなどは使用せず、子どもは極力自身の免疫力で治すように言われる。 

 

そのため、症状が異常でない限り&ウイルス性の場合、人々は病院には行かない。ただ家で休息するのだ。 

 

しかも病院はいつも混んでいて、仮に予約があったとしても丸半日は確実につぶれる。実は我が子は、1歳から熱性けいれんを数回起こしており、夜中の緊急病院にも何度か駆け込んだことがある。しかし緊急で駆け込んだのにも関わらず、解熱剤を投与された後は医者の診察まで10時間待ちをしたこともある。この待ち時間は、緊急性(死に近い)の高い人が優先され、低い人はどんどん後回しにされるため、待合室では顔面に血を流したまま(かなり ホラーだった…)、待機している人を見かけたりもした。 

 

一般的にカナダの医療レベルは高いといわれているし、緊急性のある病気になった場合はすぐに専門医に診てもらえるとも聞く。しかし、それはイコール ”重病である可能性が非常に 高い ”という意味でもあるので、患者側としては ” すぐに検査してもらえないから病状が分 からず心配だ。でも待たされるということは、きっと重大な病気ではないのだろう…” と連 想し少し安心する、というなんともモヤっとした日々を送ることになる。 

 

日本にいる私の両親は、孫の具合が悪いと知ると「病院へ行きなさい」と言う。このような カナダの医療事情を話しても、病気の大小に関わらず医者に診てもらえるという日本の状況 を考えると完全に理解不能のようだ。 

こと医療事情に関しては、やはり日本の方が圧倒的に良いなとしみじみ思う海外生活である。

 

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SASAKI

 

海外移住をきっかけに本格的にライター・エディターとなる。英仏話者。人々の生き方や働き方、子育てに興味があり、取材・インタビュー記事が得意。現地では新たな挑戦として、現地企業でマーケティング・カウンセラーも経験し、海外と日本の架け橋となるようなサポートもしてみたいと考えている。