イギリス発、十人十色の働き方
ボッティング大田 朋子(Tomoko Botting-Ota)
本コラムでは、働く女性にインタビューして仕事・起業のこと、ライフワークバランスのとりかた、リラックス法、時短の工夫といったお話をうかがいます。
第6回目は、南アフリカ出身でオーストラリアにお住まいのアミリア・メンターさんに登場して頂きます。図書館で働きながら地元のマーケットで自家製カップケーキの販売をされています。
・南アフリカのケープタウンのご出身、どういう経過でオーストラリアに移住されたのですか?
南アフリカにいた時の旦那の同僚で後にオーストラリア(ダーウィン)に移住した友人がいるですが、彼から「ダーウィンでエンジニアを探しているから来ないか」と誘われたのがきっかけです。それが約10年前で当時子どもたちは9歳と6歳でした。子どもたちの教育や将来の生活を考えたとき南アフリカにいるのでは限界を感じていたので、よりよい未来を求めて移住を決めました。ケープタウンでは私の両親を始め親せきがみんな近くに住んでいて毎日行き交う環境だったので、家族のつながりに恵まれた状況からから子どもたちを離すことは心苦しかったですが、移住して本当によかったです。
・アメリアさんのお仕事のことを教えてください。
ダーウィンの図書館で働いています。図書館では赤ん坊や幼児に読み聞かせする「ストーリータイム」や家族で参加できる「ファミリーファンタイム」を毎週開催していますが、それらを担当したり、小学校に行って本を紹介したり、老人ホームにいるなどの理由で図書館に来られない人たちのために本を選んで持って行ったりといった仕事で、図書館でのカスタマーサービスです。子どものときから本を読むのが大好きだったので本に囲まれて働けるのは最高ですし、人と接することが大好きなので、わたしの好きなことを凝縮したような環境です。
オーストラリアでは自分の優先順位や家族との時間といった人生のクオリティーを大切にできる働き方がしやすいと感じています。例えば、わたしが働く図書館では毎週一回マネージャーとオープンに話ができる機会が設けられていて、困っていることがあればどんなことでも相談できます。ちょっと前に家のことでごたごたしていてそのことをマネージャーに話をしたら、仕事の時間中にカウンセリングに行ける手配をしてくれました。子どもたちが小さかったときも、子どもに何かあったとき後ろめたさなくすぐに仕事を抜けられる環境は本当にありがたかったです。
・お仕事とは別に、ホームメードのカップケーキなどをマーケットで販売されているんですよね?
子どもの頃から「ベイキング」、ケーキやクッキーを焼くことが大好きでした。4年ほど前に息子がラグビーのえん戦に行くためと修学スキー旅行に参加するために資金集めが必要で、カップケーキを売ることでファンドレイジングをしました。4000個のカップケーキを売ったんですよ!それがきっかけで友人や知人からイベントやパーティー用にケーキを作ってほしいと注文されるようになって、大好きなベイキングを仕事にできないかと考え始めました。そんな時ダーウィンでローカル&オーガニックをコンセプトにしたファーマーズマーケットでの出店募集を目にして応募、トライアル期間を経て今にいたります。店名は“Amelia's Baked with Love”、おかげさまで大繁盛しています。
・図書館で正社員として働かれていますが、副業は大丈夫なんですか?
副業をするときには指定のフォームに記入して提出するといった申告が義務づけられていますが、それさえきちんとすれば副業が認められているので問題ありません。
・週5日正社員として働いて土曜日はマーケットでケーキを販売、お子さんもいらっしゃるし、時間管理が気になります。
マーケットは乾季*だけあり、毎週土曜日夕方4時から夜9時までです。乾季の半年間は、水曜日仕事の後に買い出しに行って金曜日仕事から戻った夕方6時過ぎから準備を始めるといった生活です。金曜日はベイキング(焼く)をして土曜日の午前中にクリーム類でデコレーションしたりといった仕上げをして、午後4時から始まるマーケットに持っていくというルーティーンです。
(*ダーウィンの気候は4 月から10 月までの「乾季」と11 月~4 月の「雨季」に分かれる)
どうやったら家庭と二つの仕事を気持ちよく両立できるかって友達などにも聞かれるですが、お料理は好きなので毎日作るのは全然苦にならないんです。仕事から帰ったらすぐ台所に行って夕食の準備をしますが、疲れるとか思ったことはありません。最近は作る量に気を使うようになりましたが……。というのも以前はたくさん作るのが好きだったのですが、最近は残り物を食べるのが嫌になってきて(笑)。その日と翌日仕事場に持って行くランチ分だけを作るように量に気をつけ始めました。献立にはスープやシチュー、カレーが多いです。多種類のスパイスを組み合わせて毎回違う味ができるのが楽しいです。掃除や片づけは家族の協力を仰ぎます。特に乾季は土曜日も家を留守にするので掃除にまとまった時間がとれませんからね。わたしは例えば料理をしながらでもこまめに気がついた場所を掃除して掃除だけの時間をとらずに済むようにしています。旦那や子どもたちは日曜日に自分の部屋を掃除します。
・これからの夢は何ですか?
息子はすでに独立して働いていて娘はあと2年で高校が終了します。子育てが一段落する数年後を見据えてオランダへの移住を検討しています。昔アムステルダムに2年間住んでいたのでネットワークがあるしオランダ語を話すので、次の候補地としてはアムステルダムが有力です。移住先では自分のお店を構えて、大好きなカップケーキを販売したいと夢見ています。
・アメリアさんのお店 “Amelia's Baked With Love” https://www.facebook.com/ameliasbakedwithlove/
・アメリアさんが出店するオーストラリア・ダーウィンのローカル&オーガニック ファーマーズマーケット“Malak Marketplace”
https://www.facebook.com/malakmarketplace/?tn-str=k*F
ボッティング大田 朋子 Tomoko Botting-Ota
ライター&プロジェクトプロデューサー
アメリカ→ドイツ→インド→メキシコ→アルゼンチン→(数か月ばかりの英国滞在)を経て、2011年秋スペインへ移住。
現在イギリス・カンタベリー在住。
メキシコでオーガニック商品の輸出会社立ち上げ+運営。
アルゼンチンのブエノスアイレスでマンガの国際著作権エージェント立ち上げスペイン語出版。
⇒プロフィールはこちら https://tomokoota.wordpress.com/about/