コロナ過1月のイギリス「変異種で感染者数が急増の中迎えた受験シーズン、ワクチン接種も進む」

                                                ボッティング大田朋子

 

12月を過ぎたあたりから新型コロナウイルスの変異株がイギリスで猛威をふるい始めた。感染力の高い変異株の出現により国内のコロナ患者は急増、致死率も上昇をたどり1月26日にはイギリスでの新型コロナウイルスによる死者はとうとう10万人を超えてしまった。1月5日からは3回目のロックダウンが始まって現在もロックダウン中、イギリスでのコロナ戦争はさらに厳しい局面を迎えている。

 

・変異株の猛威、しかしワクチン接種も進む

筆者が住むイギリス東南部はコロナ変異種が急速に広がり始めた地域。身近なところに目を向けても12月半ばから何人もの友達がコロナにかかった。それまでのように「知り合いの知り合いがかかった」という第二次的な情報ではなく、顔見知りの人たちが何人もコロナに感染したのが12月半ばからだった。変異株の感染力は最大70%と言われるが、身近な人たちの感染例でその数字の脅威的な現実を目の当たりにしている。

 

しかし、世界に先駆けて12月9日から始まったワクチン接種プログラムも確実に進んでいるといえる。先月のコラムで、病院勤務者や老人ホームを経営している友達たちはすでにワクチンの一回目を接種したという話をしたが、それ以降もこの1ケ月の間に義父(80歳)やご近所の高齢者の方たちはみんなすでに一回目のワクチンを接種し終わっている。政府データによると今月18日にはすでに400万人が接種を終えたそうだが、ワクチン接種が確実に進んでいることを実際身近な例で確信している。実際のところ、ワクチンだけが今イギリスに住むわたしたちの唯一の希望になっている。

 

コロナに関していうとことごとく対応が遅れそのせいで必要以上のつけを国民が払ってきた感があるイギリス政府の対応・対策に不満や絶望感は山盛りあるが、ワクチン接種の取り組みの迅速さと規模に関しては評価できると個人的には思っている。変異株にも既存のワクチンの効果が期待できるとされていることが何よりも救い、とにかくワクチン接種の普及で今の混乱を落ち着かせてほしいと祈るばかりだ。

 

 

・コロナ過での受験

筆者の子ども(11歳)は11月から1月にかけて私立中学の受験があったが、それらもコロナに翻弄され変更に次ぐ変更が相次いだ。コロナ過で次々と変わる制約に翻弄されるかたちで試験日は何度も変更されたし、受験校に滞在する時間を減らす目的か受験科目を減らした学校もあった。受験のために旅行をすることは「エッセンシャル・トリップ(必須の移動)」とみなされてロックダウン中でも決行してよいことになっていると後でわかったのだが、教育省の発表があいまいで受験の前日に中止が発表されたときもあったし(後日日を改めて実施された)コンタクトを減らすためにオンラインの試験に切り替えた学校もあった。

 

突如再ロックダウンが始まったことを受けて、オンラインでの試験や面接に切り替えた学校もあったし、コロナ安全対策を取ったうえで学校での試験を決行した学校もあった。(主流はオンライン試験&面接だった)。

 

受験学校まで行って試験を決行したケースでは、通常は1日で一斉に行うテストを数日間の午前と午後に分け250人入れる体育館に学生を20人だけ入れるなどしてソーシャルディスタンスを徹底していた。

 

リモートでの試験に切り替えた学校もオンラインでの回答と筆記を上手に組み合わせたやり方をしていた。オンラインでの試験では各生徒に「コード」が割り当てられ各自が試験問題にアクセスしてスクリーン上で回答、試験中はカメラとマイクをオンにした状態で「監視」した状況を作っていた。または自宅で「筆記試験」を行うときは、テスト開始15分前に保護者に試験用紙がメールされそれを印刷、解答用紙に書き込んだものをテスト終了後即座にスキャンして学校側に送ることで対応したところもあった。

 

何はともあれ各学校が対コロナの安全性を確保する形で受験を決行しすべての工程を無事終えたことに今はほっとしているが、親としては受験以外のところで変な神経を使いぐったりと疲れたというのが本音。試験や面接がオンラインで行われたときは、インターネット回線が悪くなってはいけないと家中のディバイスの電源をすべて切って対応するなどの神経を使いどっと疲れた。

 

・「これが今の普通」

というわけで、コロナのせいで変更に次ぐ変更の追われた受験に母親のわたしは神経をすり減らし余計な疲労感マックスだったが、肝心の子どもは「これが今の普通だから」という感じで淡々としていた。子どもたちの方が頭で比較したり「通常だったら…」などと非建設な比較をしない分、柔軟に健全に今の状況に対応していると感心したのだった。

子どもの純粋な物の見方を見習いたいものだ、本当に……。

 

 

繰り返しになるが変異種の猛威で暗いニュースが続くイギリスではあるがワクチン接種は確実に進んでいる。そちらに目を向け今はとにかく自分たちができることを淡々としながら毎日を乗り切っている感じだ。ああ早く友達と会いたい、日本に行きたい、などと切に願いながら……。

 


ボッティング大田 朋子 Tomoko Botting-Ota

ライター&プロジェクトプロデューサー

 

アメリカ→ドイツ→インド→メキシコ→アルゼンチン→(数か月ばかりの英国滞在)を経て、2011年秋スペインへ移住。

現在イギリス・カンタベリー在住。

 

メキシコでオーガニック商品の輸出会社立ち上げ+運営。

アルゼンチンのブエノスアイレスでマンガの国際著作権エージェント立ち上げスペイン語出版。

 

 ⇒プロフィールはこちら https://tomokoota.wordpress.com/about/

 

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