11月のイギリス

「再びロックダウンで見つける小さな喜び」

                                                                                                                                             ボッティング大田 朋子

 

先月末のイギリス発コロナレポートで感染率に応じた3段階の警戒レベル(ティア)が導入されたとの話をした矢先、感染急増を受けてとうとう2度目のロックダウンを行う旨が発表された。という訳で今は11月5日から始まった再ロックダウン真っ最中である。

 

とはいえ、今回のロックダウンでは学校や大学などは対面で授業を続けている点を始めとして前回とはルールがかなり違って、一市民・一消費者の目線だけでいうと「かなりゆるいロックダウン」といえる。というのも、運動を目的に外出するのが一日一回だった前回に対し今回は外出回数の制限がないし、公共の屋外のスペースなら一緒に住んでいない他人一人となら会ってよいことになっている。また「11月5日から12月2日までの4週間」と期限が定められているので、無期限で始まった3月のロックダウンに比べると気も楽だ。個人的には子どもたちの学校が開き続けていることに胸をなでおろしている。

 

12月3日以降ロックダウンは延長されず、前回の三段階の警戒レベルが厳格化されて再び導入されることも発表されている。わたしが住む地域は警戒態勢が一番高い「ティア3」にあたるのでもうすぐロックダウンが終わるとはいえ、まだまだトンネルの中を出口が見えないまま彷徨っている感は否めないのだが……。

 

ロックダウン中の先の見えない不安や暗い話はキリがないので、今回は二度目のロックダウン中に見つけた気持ちが明るくなることを紹介したい。

(9月にレポートしたコロナ禍で見られるポジティブな動きはこちら https://bit.ly/3l8V61b

 

 

・寒いなかウォーキング人口増大

今回のロックダウンのなかでは、前述の通り屋外でなら一緒に住んでいない他人(一人のみ)と会ってよく、屋外でのリクリエーションが奨励されている。これは人々のメンタルヘルス問題や肥満増加を考えれば(そして屋外ではコロナの感染率が低くなる点も含めて)当然の条件ともいえるが、とはいえ飲食店やレジャー施設は閉まっているので人と屋外で会うとなると自ずと「ウォーキングに行こう。」だとか「サイクリングに行こうか。」といった話になる。

 

わたしも今月に限っては、普段なら「コーヒーでも飲みましょうか」といった流れになる人とも「ウォーキングでもどうですか」と誘い合った。飲食店の店内営業は閉鎖しているがテイクアウトならできるので、外を歩きついでに地元のカフェでテイクアウトしてブラウニーなんかもついでに買って、小さいことだけど地元のお店を応援できるところもなんだかよい。

 

思えば寒くて暗さが厳しくなる11月のイギリスで、ここまで人がウォーキングをしている姿を見かけるのは珍しいんじゃないかと思う。そういう点では、室内にこもりがちな季節にいつも以上に人が外に出て体を動かしたのではではないだろうか。ロックダウン中とはいえウォーキングを名目に友達と会うことができたことは、わたしを含め多くの人には精神的な救いになったし、ロックダウン中に蓄積したカロリーやイライラも燃やせたはずだ。

 

・地元ふらりと再発見

遠出の外出が制限されていることもあって、自ずと出かける先は近所になる。大人はウォーキングかサイクリング、子どもたちはインラインスケートがわが家のパターンだが、それにしても今年ほど自分が住んでいる地域を動き回ったことはない。おかげで新しい歩道や景色の「発見」の連続だった。いつもなら入っていかないフットパスに足を踏み入れる、するとメイン道路からは想像もつかない景色に出会って圧倒されたことが何度あっただろう。予定に追われている生活をしていたら、こういった寄り道はしなかったと思う。

 

先ほどの話とも重なるが、普段ならランチやコーヒーを片手に会う友達ともアウトドアで会うしかないため、友達のウォーキング道も教えてもらったりして、それこそ身近なところでまたまた発見の連続だった。特に犬の散歩をする友達が選ぶ道などは、こんなことがなかったら全く知らないまま終わっていただろう。英語では、“Every cloud has a silver lining(どんな逆光でも希望の光がある)”という表現があり、今年ほどこの表現を聞いた年はなかったが、まさにその通り。コロナ過こそ思い出したい、しんどいことにも何かいいことが隠れているはず、人生万事塞翁が馬ということを。

 

つい最近も、友達とビーチ沿いをウォーキングしていたら、妖精がいそうな小さな楽園を見つけた。聞けば地元の人たちが子どもたちのために作った「妖精の森」で、シーズンによっては妖精にお手紙を出せるポストが設置されているそうだ。(そして返事がくるのだとか!)

 

そういう心がほっとする発見に癒されながら、結論を急がずにロックダウンを、そして異例な一年となった2020年のカウントダウンを始めたのだった。“Every cloud has a silver lining”を何度もなんども唱えながら……。

 

【参照】

・秋のイギリス、コロナ禍で見られるポジティブな動き https://bit.ly/3l8V61b 

・10月イギリスで地域別警戒システム導入 https://bit.ly/33hawdN


ボッティング大田 朋子 Tomoko Botting-Ota

ライター&プロジェクトプロデューサー

 

アメリカ→ドイツ→インド→メキシコ→アルゼンチン→(数か月ばかりの英国滞在)を経て、2011年秋スペインへ移住。

現在イギリス・カンタベリー在住。

 

メキシコでオーガニック商品の輸出会社立ち上げ+運営。

アルゼンチンのブエノスアイレスでマンガの国際著作権エージェント立ち上げスペイン語出版。

 

 ⇒プロフィールはこちら https://tomokoota.wordpress.com/about/

 

ブログ https://tomokoota.wordpress.com/